「本発明」か「本開示」か - Gloriaの知財レシピ集

「本発明」か「本開示」か

米国出願の特許明細書において、「『本発明』という用語を使うと、特許請求の範囲の限定解釈につながるため使用するべきではない。『本発明』の代わりに『本開示』と書くべき。」といったことが実しやかに囁かれています。

これまでにも、出願人(メーカー等)や特許事務所の内部で、「本発明の代わりに本開示を使用する」といったことをマニュアル化しているケースも多々見受けられました。

しかし、根拠は一体何なのだろうか?その様な判例があるのだろうか?

・・・といった会話を、知人達としていたことがありました。
その後、その中の一人が、「Gemini+Deep Researchに尋ねたら、(本発明と本開示に関する)判例を見つけてくれた。」といって、出て来た判例2つの情報をシェアしてくれました。

しかし、その2つの内容をよく読んでみると、全然違う(※その様な内容の判例ではない、という意味で)ものでした。

やはり、生成AIに頼り切るのは、本当に危険です。

人力で調べ直したところ、「本発明」(”present invention”や、”invention”)を使うことで権利範囲が狭まってしまうという考え(意見)は、人々の単なる誤解のようでした。

具体的には、2007年にFederal Circuitから出された判決に、

” [w]hen a patent thus describes the features of the ‘present invention’ as a whole, this description limits the scope of the invention.” Verizon Service Corp. v. Vonage Holdings Corp., 503 F.3d 1295, 1308 (Fed. Cir. 2007)

とあったのを、誤解釈した人々が、このような考え方を広めてしまったため、今でもそのようなことが、少なくとも日本では広く信じられているようです。

上記のFed. Cir.の記載は、単に、明細書中に開示した実施形態の構成が全てである様な記載をし、その他の変形例や構成要件の付加・組み合わせ・置換などについて記載しなかった場合には、「本発明」が限定的に解釈される、といったことが述べられているに過ぎないのです。

明細書中に様々な実施形態や変形例を書かなければ、発明が限定解釈される、という事項に関しては、「本発明」という用語の使用とは特に関連性は無い訳です。

いわば誤解から、このような考えが広まってしまったわけですね。

思えば、明細書は、発明を詳細に説明する技術説明書のはずですので、これに説明する対象物である「本発明」や「発明」という用語を用いてはならない、というのは摩訶不思議な話ですよね。

ということで、本件に関しては、チャッピー(ChatGPT)達の実力だけでは全然ダメでした。

使いこなす側の人間(ヒト)が、正しいpromtを付与することが出来るかどうか、また、生成AIで得られた回答の真偽を適切に評価できるか、といったことが問われているような気がしました。

ということで、昨日に引き続き、生成AIがらみのお話でした。

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